パッシブデザインの5つの設計項目①(断熱編)

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鹿児島県・出水市の丸久の家創りです。

これからの家づくりの形自然エネルギーを最大限活用した「パッシブデザイン」のことについて書きます。パッシブデザインには5つの設計手法があります。パッシブデザインはこの5つの設計手法をバランスよく設計し、地域の特性を考えた設計手法がパッシブデザインになります。パッシブデザインでは、この地域の特性を考える事により、地域毎のパッシブデザインの形があるような気がします。

北海道には北海道のパッシブデザイン

東京には東京のパッシブデザイン

鹿児島には鹿児島のパッシブデザインが・・・

これまでは、「性能を上げる=金額アップ」が一般的に常識の範囲でした。多額のお金をかけずに、より省エネな住宅づくりはできないのでしょうか?

パッシブデザインは、「省エネ住宅」「ZEH住宅」も考慮した、これからの家づくりだと思います。

パッシブデザイン住宅は、住設機器や屋根材など使う材料にこだわるのではなく、ただで利用できる自然エネルギーを十分に家づくりに取入れて、より省エネを、より快適・健康を目差すのです。

パッシブデザイン・自然エネルギーを取入れた住宅が与えてくれる多くのメリットについて紹介します。

パッシブデザインの定義

『パッシブデザインとは、建物のあり方を工夫して、建物の中にある自然エネルギーを(太陽・風・地熱)を最大限に活用・調節できるようにし、高い質の室内環境を実現させながら、省エネルギーに寄与しようとする、建築設計の考え方とその実際的手法。』と、パッシブデザインの第一人者の一人「パッシブデザイン協議会 代表理事 野池政宏」さんは定義されています。

また、野池さんの言葉を借りれば、パッシブデザインとは

「エアコンの暖かさと、陽だまりの暖かさ、どちらがすきですか?」

「エアコンの涼しさと、涼しい風を身体に受けるとでは、どちらが気持ちいいと思いますか?」

パッシブデザイン・自然のエネルギーを活用した、後者の方ではないでしょうか・・・。

パッシブデザインにおける設計項目は、

①断熱

②日射遮蔽

③自然風利用

④昼光利用

⑤日射熱利用暖房

ここで重要なのが、これらパッシブデザインの5つの設計項目は「地域・立地・住まい手」という3つの要素によって内容が異なってくることです。

また、パッシブデザインは一部をとらえるのではなく、その全体(パッシブデザイン5つの設計項目)をしっかり意識しながら、「地域/立地/住まい手」という要素で決まってくる「最適化」を導きだそうとする姿勢が不可欠です。

つまり、「地域の特性に合わせて、パッシブデザインの5つの設計項目をバランスよく」です。

冒頭述べた様に鹿児島・出水市には鹿児島・出水市の「パッシブデザイン」、「東京には東京の「パッシブデザイン」、北海道には北海道の「パッシブデザイン」があるということです。

パッシブデザインの5つの設計項目

(1)断熱

パッシブデザイン

パッシブデザイン

パッシブデザインで、自然エネルギーの要素が入っていない「断熱」をパッシブデザインの設計項目に入れる事については、パッシブデザイン協議会の野池政宏さんも、いささか違和感があるかもしれないと言われています。

しかし、「断熱」の主目的は「冬の熱損失を防ぐ」ということですので、断熱性能は建物の熱的性質を大きく規定するのもであり、パッシブデザインの目標(高い質の室内環境の実現・省エネルギー)を考えたときに、パッシブデザインの中に、この「断熱」をはずすことはできません。

実際には、「冬に窓から入った太陽熱をいかに守るか」、「夏に太陽熱をいかに入れないか」がパッシブデザインでは重要です。

簡単にわかりやすく説明するとパッシブデザインの「断熱」の要素とは「魔法瓶」のような住宅のことです。

パッシブデザイン

パッシブデザイン

魔法瓶と同じ原理で、熱が冷めにくい家づくりを目指すということです。

1.断熱性能を決める各部位について

〇屋根・壁・基礎の断熱

パッシブデザイン

パッシブデザイン

〇サッシの断熱

パッシブデザイン

パッシブデザイン

上の図にあるように、断熱性能を決めるのは部位は主にに「屋根・壁・基礎・窓」の4つの要素です。

また、それぞれに国の基準があり、その基準に対して各社が「どれくらいの数値なのか?」確認することが大事です。

2.断熱性能と同じくらい大事な「保温性能」

パッシブデザイン

パッシブデザイン

住宅には、性能を表す数値があります。

上の図にあるように「断熱性能=UA」「値保温性能=Q値」

断熱性能=UA値は、現行の「改正省エネ基準」で用いられる数値で、保温性能=Q値は、一つ前の基準「次世代省エネ基準」で用いられた数値です。

このUA値とQ値の違いは、

UA値は、「屋根・壁・基礎・窓」を「外皮面積(表面積)」で割っています。

Q値は、「屋根・壁・基礎・窓」の熱損失のほかに「換気・漏気」の熱損失が考慮さて「延床面積」で割っています。

※UA値には、「換気・漏気」が入っていません。

これは、どういうことかと言うと、UA値は各部位(屋根・壁・基礎・窓)の合計の平均値であるという事です。

実際の建物の保温性能(暖かさ)を知るうえでは、「換気・漏気」を含めた、建物の大きさ「延床面積」で割った、Q値の方で見るのが適切だと、「パッシブデザイン」を進める実務者は認識しています。

※ただし、100㎡を切るような建物は「実際の建物よりもQ値が大きく出る」という問題もあり、注意が必要です。

※また、UA値も現行の「改正省エネ基準」の計算の用いられるので重要です。

3.断熱性能が高いと夏は不利になる。

冒頭述べた様に、「断熱」の主目的は「冬の熱損失を防ぐ」ですので、冬期に対してはメリットが大きいです。

では、夏期に対して「断熱」は、「断熱性能=夏涼しく」という単純な構図にならないことに注意が必要です。

断熱性能の向上により建物の保温性が高まり、建物内部にある熱が逃げにくくなるという現象「熱ごもり」が起きるからです。

この事は、多くの建築実務者も勘違いしてることなのでご注意下さい。

4.その他の断熱性能向上のメリットは?

①健康・ヒートショック対策

「ヒートショック」とは、温度差の急激な変化による血圧の急上昇や急降下、脈拍の反動などが体に及ぼす悪影響です。

主に脳疾患・心疾患で重大な危険に係ることです。

パッシブデザイン

パッシブデザイン

ヒートショックで搬送される数は推定17,000人/年で交通死亡数4,000人/年よりはるかに多いです。主に、浴室やトイレで多く発生します。家全体の断熱性能を高めると、室内間の温度差が少なくなり、ヒートショック対策になると言われています。

②健康・その他の疾病

パッシブデザイン

パッシブデザイン

上の画像の様に、住宅性能のグレードを5=Q値1.9レベルにあげると、顕著な改善率があらわれています。お医者様や大学の先生といわれる方々が実データーを元に発表されています。

③快適性

断熱性能が高くなると、壁などの室内側表面温度が下がり辛くなるので体感温度も高く、快適性の向上につながります。

パッシブデザイン

パッシブデザイン

パッシブデザイン

パッシブデザイン

また、室内の上下温度差も少なくなり、一般に言われる「冬の足元の寒さ」の解消にもなります。

5.断熱性能と同じくらい大事な「気密」

そして、「断熱」の項目で最後に「気密」について書きます。最後に書くくらいパッシブデザインにとっての大事な要素なのです。

パッシブデザイン

パッシブデザイン

気密はⅭ値(隙間相当面積)と表す。

パッシブデザイン

パッシブデザイン

気密は断熱と同じくらい大事な要素です。

上の画像を見てもわかる様に、どれだけ断熱性を上げて暖かい家を造っても、気密が悪ければ、そこから熱は逃げていきます。

断熱と気密は相対関係にあります。

しかし、この気密性能Ⅽ値は、現行の省エネ基準「改正省エネ基準」では削除されています。

削除という事は、一つ前の省エネ基準では、気密性能Ⅽ値の基準があり、数値も「5」以下と明記してありました。(※気密性能Ⅽ値「5」という数字も、世界の基準と比べてかなり低い数字です。つまり隙間が大きな家です。)

※この、気密性能数値Ⅽ値が現行の「改正省エネ基準」では削除された事に関しては色々と噂はあります。パッシブデザインでも大事な「気密」が、日本の省エネ基準ではないがしろにされている様な感じがします。我々の仲間が、パッシブデザインの先進国のドイツに視察に行った時は、「断熱」よりも「気密」を重要視してる説明を受けたと聞きました。

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